人気シリーズの最新作「釣りバカ日誌17」の撮影が、順調に進んでいる。石川県輪島市など能登地方が主な舞台で、ヒロインは石田ゆり子。おなじみ浜ちゃん(西田敏行)、スーさん(三國連太郎)の名コンビの息は今回もぴったりだ。(福永聖二)
「これまでと違って、実にしっとりとした話で、木下恵介劇場みたいです。お祭りの場面なんて、カメラがぐーっと動いてまるでミゾグチ(溝口健二)の世界。『この映画、釣りバカだったよね』と思わず確認してしまいました」と言って笑うのは西田。
4作連続でシリーズを手がける朝原雄三監督は、恒例となっている浜ちゃんの「宴会芸」も「合体」も今回は“封印”した。
「前回は、ギャグ的なものを少しやり過ぎましたからね。振り子ではないんですが、今度は人情路線で行こうと。大きな話はありません。生活の細部をしっかりと見つめたい」と朝原監督は語る。
三國もまた、「喜劇にも様々な形がある。今は何でも荒唐無稽(むけい)なギャグに走りがち。僕はとても藤山寛美さんみたいになれないが、西田さんは近い。(松竹新喜劇の基礎を築いた)渋谷天外、寛美の芝居のやりとりのような味を出せたら」と話す。
結婚に失敗して鈴木建設で再び働き始めた弓子(石田)と高校の美術教師・村井(大泉洋)。不器用な2人の恋模様が、いつもの浜ちゃん、スーさんの騒動とともに描かれる。弓子の親代わりである頑固な兄(片岡鶴太郎)は、輪島の漆塗り職人という設定だ。
輪島市などが全面協力。撮影の背景には、地元の名工が手がけた数十万円から数百万円という漆器や漆塗りの家具類が並び、キリコ祭りの場面も市民総出で再現された。
輪島市は初めてという石田も「思っていたより観光地化されていなくて、しっかりと文化が根付いている雰囲気がとてもすてき」と語る。
「国民的娯楽映画に出演できて光栄。西田さん、三國さんとご一緒しているだけでも夢のよう」と石田。「コメディーにはあこがれていました」というが、「泣かせることより笑わせることの方が何倍も難しい」ことを改めて実感しているようだ。
三國は今回、台本の裏表紙に「世阿弥の能/近松の浄瑠璃/情調(源氏物語)/滅びの美学(平家物語)」と大きく書き込んで撮影に臨んだ。
「日本の文化の基本は、この4本柱だと思う。この映画は西田さんとのやりとりが、私にとっても刺激になるのですが、ともすると引っ張られてしまう。基本を大事にしなくては、と自分に言い聞かせているんです」と話していた。
8月5日公開予定。
(2006年6月10日 読売新聞)